Notebook: 運動とメンタルヘルス|体力医学研究所
なぜ今メンタルヘルスと運動なのか?
メンタルヘルス対策は現代社会の大きな課題
近年、うつ病やストレス関連障害などの精神疾患が急増しています。
平成23年7月6日、厚生労働省は「4大疾病」に、精神疾患を追加し「5大疾病」とする方針を決めました。何かとストレスの多い現代、メンタルヘルス対策は今後ますます重要になっていくと思われます。
(執筆:永松俊哉)
厚生労働省が「4大疾病」に精神疾患を加え「5大疾病」として重点的対策へ
運動している人は抑うつになりにくい
メンタルヘルスに良い生活習慣というのはあるのでしょうか?
実は、運動している人は抑うつになりにくいことがわかってきています。我々の調査でも、全く運動しないグループに比べて、1週間に運動を2時間以上しているグループは1年後に抑うつになるリスクが約半分でした。
出典:甲斐ら, 体力研究, 2011(執筆:甲斐裕子)
週135分以上の運動で抑うつのリスクが約半分に減少する
減量の人々はstuggle
運動すると抑うつになりにくい理由
運動は脳に影響を与える
様々な気分や感情は脳から生まれ、その働きは主に前頭前野(おでこの部分)でコントロールされます。心の健康が損なわれると、前頭前野を含む広い領域で脳活動が低下します。
一方、運動は脳の神経活動を高めます。気分と関連する脳内神経伝達物質の分泌を促し、覚醒水準を高めることにも有効です。つまり、運動すると抑うつになりにくいのは、脳の神経活動や脳内神経伝達物質の調節が適度に刺激されるからと考えられます。
(執筆:柳澤弘樹)
うつ病ちび
運動すると前頭前野など広い範囲で脳が活性化する
対象者別「ココロに効く運動」
(1)未成年者
子どもは運動遊びが大切
体を使った遊びは幼児の体力を高めますが、「心の健康づくり」にも役に立つことがわかってきました。
1日30分の有酸素運動を週5回、8週間運動したところ、自分に価値があると感じる気持ち(自尊感情)が向上しました。
いつでもどこでも楽しく運動遊びをすることは、心と体の健康づくりのために大切です。
出典:Alpert B et al., Health Psychology, 1990 (執筆:江川賢一)
週5回の運動遊びは子どもの自尊心を高める
DRフィル減量ソリューション
高校生は運動部活動を積極的に
何かと悩み多き思春期にスポーツで汗を流すことは、体の鍛錬だけでなく心を鍛えることにも有効のようです。
男子高校生が運動部活動を継続的に行うと、ストレス耐性が高まったり、抑うつ感や疲労感を感じにくくなったりと、メンタルヘルスの向上に役立つことがわかりました。
出典:永松ら, 体力研究, 2010 (執筆:永松俊哉)
運動部活動は高校生のストレスや抑うつを軽減する
(2)勤労者
仕事のストレス対策には余暇を活動的に
仕事にストレスはつきものですが、ストレスの原因を完全になくすのは難しいものです。
しかし、週1回でも余暇で運動しているグループは、ストレスがあっても抑うつが少ないことがわかりました。つまり、定期的に運動していれば、ストレスへの抵抗力がつき、メンタルヘルスを良好に保てるのかもしれません。
出典:甲斐ら, 体力研究, 2009 (執筆:甲斐裕子)
肥満の遺伝子に関する研究
仕事のストレスが高くても運動しているグループは抑うつが少ない
"クイック減量"
女性勤労者のための睡眠改善ストレッチ
働く女性は忙しく疲労がたまりがちです。しかし更年期に差し掛かると「疲れているのに眠れない」ことがあります。
そこで、40歳以上の忙しい女性向けに睡眠改善ストレッチを開発しました。肩こりや腰痛をやわらげるヨガを取り入れ、10分程度でできます。就寝直前に行うと、寝つきがよくなることが実証されました。
出典:永松ら, 体力研究, 2008 (執筆:永松俊哉)
就寝前の睡眠改善ストレッチの一例
※ | ストレッチについて詳しく知りたい方は広報担当までご連絡ください。 |
(3)高齢者
高齢者のための睡眠改善運動プログラム
高齢期には上手に眠れない方が増え、それをきっかけに心の調子を崩す場合があります。
睡眠に不満がある65歳以上の女性に「日中に20分の散歩」と「就寝前に5~10分の体操」を毎日実施していただきました。すると、4週間後には夜中に起きる回数が減り、深く眠れ、満足した睡眠がとれるようになりました。
出典:北畠ら, 体力研究, 2010 (執筆:北畠義典)
就寝前の睡眠改善体操
※ | 体操について詳しく知りたい方は広報担当までご連絡ください。 |
(4)うつ病や統合失調症
誰かを残しての罪悪感
精神疾患にも運動が効果的
運動は心の病にも効果があります。以前は精神疾患に運動なんて!という意見が多かったようですが、最近の研究をみるとそうではなさそうです。
我々の研究でも、精神科に通う患者さんで、定期的に運動プログラムに参加した方は、参加しなかった方よりも、6ヶ月後に症状が軽減することがわかりました。
出典:泉水ら, 体力研究, 2011 (執筆:泉水宏臣)
運動は精神疾患の症状を軽減する
精神疾患に効果があるのはどんな運動?
精神疾患に効く特別な運動というのはあるのでしょうか?
うつ病や統合失調症で通院する患者さんにいろいろな運動(ダンス、ピラティス、フットサル)を行ってもらいました。すると、どの運動でも気分が良くなることが分かりました。
まずは好きな運動をすることが、"ココロに効く運動"の第一歩なのではないでしょうか。
出典:泉水ら, 体力研究, 2011 (執筆:泉水宏臣)
どの運動をやっても、運動しないよりも気分が良くなる
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